ここで途絶えさせてはいけない、と強く想った
大井沢地区に根付いてきた「ものづくり」の精神に感銘を受ける。山葡萄のツルで編まれたカゴやわら細工、かんじき、ときとと呼ばれる民具などは、すべて先人たちの技と工夫が詰まった手仕事によって作られていた。しかしその一方で後継者不在のままどんどん引退している事実を目の当たりにする。地域に育まれてきたこうした文化が途切れようとしている危機的なこの状況を逆にチャンスだと受け止め、技を持つ師匠たちを訪ねては教えを乞うて、技術と知識の学びを積み重ねている。
大井沢の暮らしが垣間見えるようなものづくりを心懸けている
大井沢地区は豪雪地帯で、冬ともなればゆうに3メートルは雪が積もる。この地に暮らす人々は何ヶ月にもわたって閉ざされた生活をしなければならなかった。そんな厳しい環境のなかで収入源として手仕事が発達し、生き抜く技として受け継がれていった。その生活力、生活の知恵というものがとても人間らしいものだと感じた。これまで世界を転々として様々な旅を続けてきたのも、そういう暮らしに憧れていたから。この大井沢の地でそういう暮らしに出会えたということにはとても運命的なものも感じる。そういった意味で、ただ「ものづくりがしたい」というよりも、この雪深い大井沢でこそ、これをやる意味があるんだと思っている。今後も、このものづくりを継続し、町内、町外、そして県外へと情報発信して、この素晴らしい伝統の技を西川町の強みとして認知してもらえるよう、活動していきたいと思う。